MIYAKEJIMA CHURCH

マルコ福音書10:1~12

「あなたたちの心が頑固なので、このような掟をモーセは書いたのだ」(マルコ福音書10:5)

主イエスがエルサレムへと近づいて行かれると人々が集まって来ました。人々は主イエスのガリラヤ宣教の噂を聞いていたのでしょう。いつものように神の国の福音を人々にお教えになっていらっしゃったところに、ファリサイ派の人たちもやって来ました。彼らはこれまでにそうしてきたように、主イエスを試して陥れようと聖書の解釈に関する議論を仕掛けて来ました。

ここでファリサイ派の人たちが持ち出したのは、「夫が妻を離縁することは、律法に適っているかどうか」という繊細な問題でした。

ここを読む上で踏まえておかなければならないのは、これは「夫婦の離婚がいいことか悪いことか」などという単純なことが話し合われているのではない、ということです。

ここで主イエスとファリサイ派の間に交わされた議論は、夫が妻に離縁状を渡すことについて、「それを聖書の律法がどういっているか」「ファリサイ派の人たちがそれをどう解釈し実践していたか」「イエス・キリストがそのファリサイ派の信仰の姿勢についてなんとおっしゃっているか」ということを踏まえて、慎重に、そして丁寧に読んでいかなければなりません。

この時主イエスの下にやって来たファリサイ派の人たちは、「夫が妻を離縁することは当然許されることであり、それは夫の側に強い決定権がある。夫は自分の都合で、妻を自由に離縁することができる」と考えていました。

主イエスの時代のファリサイ派の中には、妻が作る料理がおいしくないとか、妻の見た目が自分の好みと違うとか、今の私達からすれば信じられないほど些細で身勝手な理由で妻を離縁する人たちがいたのです。

さて、ファリサイ派の人たちの質問に対して、主イエスのお答えはこうでした。

「天地創造の始めから、神は人を男と女とにおつくりになった。それゆえ、人は父母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる。だから、二人はもはや別々ではなく、一体である。したがって、神が結び合わせてくださったものを、人は離してはならない」

ファリサイ派の人たちが主イエスに聞いたのは、夫婦の離縁についての律法の解釈でした。しかし主イエスは天地創造まで遡って、そもそも神が人間をどのように造られたのか、ということを答えとされたのです。

主イエスは、男女の結婚が神の創造の御業であり創造の秩序であることをおっしゃいます。「夫の身勝手な都合で妻を自由に離縁できるようなものではない。身勝手な軽々しい都合で結婚を解消することは、神聖な神の創造の御業を人間が弄ぶことになる」ということを示されたのです。

マタイ福音書の山上の説教の中で、主イエスはもっと直接的にこうおっしゃっています。「『妻を離縁する者は、離縁状を渡せ』と命じられている。しかし、私は言っておく。不法な結婚でもないのに妻を離縁する者は誰でも、その女に姦通の罪を犯させることになる。離縁された女を妻にする者も、姦通の罪を犯すことになる。」(マタイ5:31)

申命記の24章の初めには、このような一文があります。

「人が妻をめとり、その夫となってから、妻に何か恥ずべきことを見出し、気に入らなくなったときは、離縁状を書いて彼女の手に渡し、家を去らせる。」(申命記24:1)

この一文だけを切り取って読むと、確かにこの時のファリサイ派の人たちが考えていたように、夫は妻に気に入らない理由があれば自由に離縁することが許されているように聞こえます。

しかしこの申命記の言葉は「離婚したければこうしなさい」という規定ではなく、「どうにもならない事情で離婚せざるをえなくなったとしても、その後、このような再婚はしてはいけない」という規定の中の一文なのです。

改めて、私達は主イエスがファリサイ派に最初におっしゃった言葉に注目しましょう。

「あなたたちの心が頑固なので、このような掟をモーセは書いたのだ」

ここで一番恐ろしいのは、このキリストの言葉ではないでしょうか。

神がお創りになった秩序・調和を壊す力・・・夫婦関係を、親子関係を、友人関を破壊する人間の心の頑なさ、弱さ・・・聖書はそれを「罪」と呼んでいます。

「あなたも神のようになれるのだ」という誘惑の言葉に負け、人は世界の初めに神から離れ、自分が神になろうとして罪に堕ち、罪に支配されるようになりました。

主イエスは、ある時、「律法で一番大切な教えは何か」と聞かれた際、「神を愛し、人を愛することだ」とお答えになりました。神から離れる、ということは、神を愛し人を愛する、という創造の秩序の崩壊を意味します。

私達の内にある頑なさ・弱さを認め、神の創造の御業にまで遡って、この世界を見つめ直しましょう。そして神がお創りになった調和の中へと再び導いて下さるキリストに身を委ねて生きましょう。